『百合の世界入門』

百合の世界入門 (玄光社MOOK)
『百合の世界入門』購入。インタビュー読んで後はぱら見程度だけど、けっこうよい感じの百合漫画ガイドブック

ここ5,6年(古くても10年くらい)のを中心に百合漫画が140点以上(表紙表記)、概ね あらすじと表紙絵&作中ページ画(1Pとかコマとか)をつけて紹介されている。表紙だけでなく中の絵があるってのは漫画ガイドとして非常によいものだと思う。近年の作品が中心で紹介された本の入手性もわりとよさそうだし。

「はじめに」で語られる百合の定義関係では広め/緩めの話をされているけれど、紹介されている作品はわりと狭め/コアなモノが中心になっている。世に出ているジャンル作品量を思うと絞り込む必要があるのだし、個人的に紹介されているラインナップはまずまずの納得感。(知らない作品もあるし。細かく見りゃアノ先生/作品入ってないなあ、とか、この先生ならアッチを紹介してくれたら、とか、諸々あるけれど、好みの問題、としとく)

インタビューは5人だけど一人一人の分量があるので読みがいあり。インタビューだけじゃなくて描き下ろしイラストのメイキング(作業自解)があるのもおもしろく。

分類が「ほのぼの&やさしい作品」「切ない&シリアス作品」「ギャグ&百合ラブコメディ作品」「ファンタジー&SF作品」「ハード&アダルト作品」と作品内容で大別されていて、並べられている作品をみると傾向が出ていて意外といい分類にも思える(自分で分類するのに使えるかというと難しいけれど)。
百合タグもなにげによく。やはり“男”関係はタグ付けしときたくなるものなんだよなあ、で。(よくよくみるとあまり精度はよくなさそうだった)

百合用語解説は量少ないと思ってしまった。とはいえ知らないスラングもあったけれど。ただ蔑称については敢て紹介しないほうがよかったのでは、と思う。


概ね満足な本だけれど、『百合の世界入門』というタイトルからすると、漫画だけじゃなくて小説/ラノベ・アニメ・映画等の他ジャンルへの言及とかジャンル史的なこととか、もう少し百合ジャンルを俯瞰するような記事もあってほしかった、というのはある。“百合漫画の世界入門”だったらまだ……(と思うも1つ前の雑記のタイトルで"漫画"という単語を敢て抜いた身としては納得できるっちゃできるか)

一迅社『百合作品ファイル』(2008)と比べると、『百合作品ファイル』は漫画以外の作品への言及や年表的なものもあってジャンル網羅的なところあるけれど各ジャンル別に見れば手薄感がなくもなく、作品ガイドとしては『百合の世界入門』のほうが紹介コンパクトで作中絵あって良さげで近年の漫画に集中しているぶん充実感があるかもしれない。 まあ2008年と2016年では出版数とかいろいろ事情違うのでアプローチ違って当然だろうけど。(紹介されている作品が大半かぶらないので補完(増補)関係のような面もあるかも)。


(※玄鉄絢先生がインタビューで百合という単語を知ったきっかけが『あおいちゃんパニック!』(竹本泉)で「百合ごっこ」という言葉が出てきた時と答えられていて、あわててkindleで購入(大昔持ってた)。が、ざざっと読んだ限りでは見つけられず...見逃したのか、元々の形態のコミックスのあとがきに書かれてるのか(電子書籍はMF文庫版がベース)...)