『美粋』『スクレ』メモ

去年3月・今年3月・8月の3回ほど国会図書館行ったときにエロ・レディコミ百合雑誌『美粋(ミスト)』とその前身の『スクレ』をパラみしたメモ。
といっても冊数に対して時間不足で、毎度最初はある程度目を通そうとするけど、時間切れでとにかく目次だけメモってたという塩梅。


目次についてはこっちのサイト に記入。


宙出版発行で、『スクレ』が1993.3-1996.2、『美粋(ミスト)』が1996.3-1999.2 でちょうど3年づつ。
『スクレ』はもともと男女モノの一般的なエロ系レディコミ誌で、ただ読者(層)/文通コーナーがレズビアン・バイ寄りに偏っていったようで、1997年5月号「特集:レズラバしましょ」前後から作品もレズビアンものへと徐々にシフトしていき、最後2冊は8割方そんな感じになって『美粋』に続いていく。
※ スクレの文通コーナーが「サッフォーの館」となり、この題名は『美粋』でも継続。


『美粋(ミスト)』になってレズビアンものが大半になるが、マンガ・小説・コーナーのいくつかは非レズビアンものが継続されている。当時のことを振り返られてる江川広美『バージンショック』のあとがきからするとノンケ女性読者のほうが多かった模様。


また、レズビアンものではあるが、男性とのからみは結構ある。とくに『スクレ』時代や『美粋』前半なんかは男女女3Pなだけのモノもあったり……ただ、たいていの場合は男とSEXしても最後は女性同士のハッピーエンドになるものが多いように思う(とパラみした範囲では)。
『美粋』後半になると男出現率はぐっと減ってくる。最後のほうはマンガ以外のページも増えて『フリーネ』等のレズビアン誌に近い印象。
※ 目次のほう手元のメモではいくつか男からみの有無も印つけてたけど男出るの当たり前過ぎて百合的ハッピーエンドならいいやであきらめた


(2018-08-26追記)
読者ターゲット的にか、学生の出現率は0ではないけれど、ほぼ成人女性同士の話になっている。
いまでいう大人百合の範疇。(今の大人百合作を読んでると(特に男がからむようなモノは)美粋・スクレ掲載作とさしてかわらんなーと思うこともあり)





『美粋』最終号「編集部(思ひ出)座談会 ごめんなさいコミック」(作画:石川恵子)

最終号に載っている編集部座談会レポートまんがが興味ぶかく。

うーん やっぱ ビアン誌だって開き直れなくてねぇ……
ようやくふっ切れて男出現率ゼロにしたのは1年くらい前
やっとミストのコンセプトが明確になってきたのよね
でコンセプトが明確になるごとに売上は低迷していった……

百合ファンとしてはせつない話だけど……当時(成人なのに)読んでない奴が何言うの類ですな。

"ビアン誌"という言い方をしてるのには、ちょっとオッ。
紙面では基本的に"レズビアン"、"レズ"だったように思われるので。
"百合"という言葉も使われていなかった。(自分がみた範囲では...)
ただ、マンガ中で描かれる花は"百合"のことは多く、絵の暗喩表現としては当然のように使われていた模様。


読者からのお問い合わせ集も面白く

Q:編集部のスタッフってみんなビアンなのですか?
A:女の子を「かわいい♡」と思う気持ちを大事にして紙面を作っています

Q:わたしの妻がレズビアンのようなんです。相談にのってください
A:たいていはHないたずらでしたが中にはマジそうなのも……

Q:サッフォーの交際欄に乗ったんですが回送がまだ着きません!
A:お気持ちはわかりますがその掲載誌が出てまだ3日目ですけど!回送に3ヶ月はかかるって書いてあるっしょ――!!


Q:Hばかり載せないで もっと精神的なつながりを描いてください!Hはいらないんです!
A:さらに部数が下がるだろおお


などなど.
※Hいらないで攻める人、当時からいたんだとわかって興味深い



(左から:山瀬よいこ(ライター)、かの(読者欄)、倉田(編集長)、かつP(星占・校正),新田(新人)、石川恵子(漫画家))





漫画作品

ざっくり見た範囲『スクレ』&『美粋』で10回以上漫画掲載があるのは、WAKO,松藤純子,江口広美,麻生なつ子,羽鳥二奈,萩浦ともこ,杉尾尚子,藤井三和子,小林拓己,牧原(槇原)もも. 5-9回が、井出知香恵,小田芽衣,鷹羽ゆう,櫻しおり,おびかたゆう,タデノナギコ,英みちこ,ましろ純,ツチヤカコミ,岸本加世子,珠石佳代.
見てない号があるので実際は多少変動するはず。
目次には載っていないけれど掲載されている作品が2,3あったりしたので、そういうのの見落としもあると思う。

まあ掲載作の多い作家さんの作品で雑誌のカラーは出てるのでは、と。


『美粋』のコミックスとして出たのは2冊のみ。

小林拓己『麗人な女性』
[asin:B06XC18W5V:image]
(麗人・祐未シリーズ)


WAKO『綺麗御殿』
綺蹟御殿 (エメラルドコミックス)


シリーズ化連載していて本になる分量があったのがこの2作って感じだったのかな?絵柄・出来的にも『美粋』の上位に人気あったのでは、と思う。中後期の作で男からみ(sex)もなし。
藤純子作品も結構いいと思ったけれど(巻頭とかも多く、たぶん人気あったと思う)、短編だけだから出しにくかったのかな、と。(男あり多いかも...けど男なし作も単行本1冊分は十分にある)

※そもそも(エロ)レディコミ掲載作って(他でも)人気のある作者でないかぎり単行本になっていない印象。そういう作者の作でさえ、昔(90年代) 本を古本屋に売りに行った時、エロでもレディコミの単行本は売れず余るからと言われて買い取ってもらえなかった思い出。
宙出版 は、2014年にも「百合コミックス」というレーベルをたて、レディス誌『恋愛白書パステル』掲載作を2冊出したのだけど、続かなかった模様(2018-08-26追記)


その他ではマンガ図書館Z R18で公開されている江川広美『バージンショック』が、『美粋』(&『スクレ』)掲載作を集めた短編集。
……と、あとがきでは『美粋』中心で『スクレ』のがちょっと混ざってる的な書き方だったのだけど初出確認したら12作中6作判明できたけどそれらは『スクレ』掲載作、『美粋』掲載作がない…………。雑誌の目次に載ってない作の可能性もあるけれど一通りみたはずの『美粋』で6作も見逃しないと思う。未読の『スクレ』に何作かあるだろうけど6作あるや否や。

(2018-08-26修正)
また amazon kindle で検索したところ OHZORA レディースコミックスという単話販売のシリーズで、『美粋』掲載作がいくつか(6作家15編ほど)出ている模様。→こちらに作品一覧メモ


他にも作家さんの個別の本に再録されているモノもあるだろうけれど未確認(hontoにandroidでしか読めないガラケー時代のレディコミ百合短編がいくつかあって『美粋』掲載作だと思っていたものが目次一覧と突き合わせるとどうも別だったってこともあり)


以下、多少とはいえ折角あらすじメモったものがあるのでいくつか列挙。ネタバレあり。男からみ(sex)のないものだけ。単語羅列メモを適当に補完して文に直したのでズレはある。※あらすじメモったのが最後に調べに行った時だけなので号数に偏りあり


藤純子「フェイクな関係」(美粋 1998 03)
卒業単位のたりない生徒が'優'での卒業を条件にテレビにも出る大学の広告塔的な教授と援交関係を結ぶ。SEXもするが教授は卒論もちゃんと指導、実は教授はもとより生徒に一目惚れしていて生徒の申し出は願ったりだった。生徒も教授を愛するようになるが、世間にレズビアンであることが発覚、大学から責められるも広告塔が嫌だった教授は海外の大学を選択二人で移住するハッピーエンド

藤純子「リップスティック・ラブ」(美粋 1997 06)
トラック運転手になった主人公。セフレはいるが本命無し。学生時代にキスして驚かれ振られた相手と再開。彼女はいに沿わぬ結婚に悩んでいた。別れ際、実は主人公が好きだったと。未練ある主人公は見合いの席に押しかけて潰し二人逃げるハッピーエンド(実は彼女、女子校でレズ鍛えてたと、主人公を手玉にとる)

藤純子「ルナティックな夜に」(美粋 1997 10)
親友が好きで社員旅行で泥酔した彼女とSEXにもつれ込もうとするも冗談とカワされ終える。主人公はゲイの彼と偽装結婚予定だったが、彼はその恋人の海外出張を見送る道すがら交通事故で死亡。死を意識した主人公は後悔したくないと思い告白。相手も実は好きだったと告白ハッピーエンド。

藤純子「サプライズ・パーティー」(美粋 1998 05)
同棲カップル。片方は仕事忙しく帰りも遅い。そんなさなか帰宅するとサプライズパーティーをされる。しかし彼女は秘密にされるより一緒にパーティ準備したかったと怒るも和解。ハッピーエンド

藤純子「裸のジェーン・ブラインド」(美粋 1998 06)
主人公はモデル経営のオーナーとして成功するも満たされない。そんなおり元モデルだった元カノと再会。彼女は子供を育てるためヌードモデルを選んだ女性で彼女をもう一度表舞台に立たせたいと思うも……二人ウェディングドレスで結婚式あげるハッピーエンド

藤純子「心の宝石」(美粋 1998 11)
富裕層の主人公は行きずりの出会いにときめく。相手はテレビのお天気のお姉さんで再会、恋人に。彼女のテレビの仕事も好転するがやがて世間にレズビアンだとバレ、彼女は地方に飛ばされ……主人公が地方都市にいくとその土地でがんばってる彼女の様子が映像で流れ、直後彼女と再会ハッピーエンド

藤純子「私の愛した女」(美粋 1998 08)
カップルの元に元カノが性転換して現れるも今カノを選択するハッピーエンド


WAKO「あなたに夢中」(美粋 1997 08)
子供もいる たらし系上司がつっかかってくる企画の子にキスすると脈アリ、惚れられるが自身は本気にならない。が自殺さわぎが起きたとき惚れていることを意識し慌てる。実は自殺は他人で気持ちを確かめあいハッピーエンド。

WAKO「FAKE LOVE」(美粋 1997 10)
主人公は同棲していたタレントの彼女に人気がでると捨てられ引きずっている。職場では元彼女に似た容姿の部下がいて好かれるが疎ましく。が一度抱擁をしてみると今度は目で追うようになる。そんなおり元彼女のスキャンダルが発覚、で戻ってくるが……部下の子を選んでハッピーエンド


江川広美「ガールズブラボー」(美粋 1997 10)
女の子好きの女子高生二人が偶然出会い悪友化。相方が彼氏持ちの子を好きになり玉砕覚悟で告白して玉砕。相方にときめきを覚えるも悪友としてつづくコメディ。(『美粋』では珍しい高校生もの)

江川広美「GIRLS TALK(美粋 1997 11)
「ガールズブラボー」の10年後。親友としてシェア生活。互いに別々に恋人につくるが長続きしない。恋人ができると相方に自慢したくてシュアしてる自宅に彼女を連れてきてその直後わかれるというのを繰り返している。互いに心の底では相手が好きということに気づかずに悪友続ける(吉富昭仁「しまいずむ」と同様の)鈍感コメディ


杉尾尚子「固い蕾」(スクレ 1995 04)
女性が好きで男になろうとする主人公。今まで付き合ってきた彼女たちには男の代用として扱われてきたが、イチバツの年上の新しい彼女はそのようなことはなかった。彼女は主人公が幻想の男を演じてることを指摘、自然のままでいいと即しながら愛する。あるとき彼女の元旦那がよりを戻そうと二人に暴力ふるい事件化。結果的に彼女は親権取り戻し子供と一緒に過ごせることになる。主人公は身を引こうとするが、彼女は一緒に暮らすと宣言。「だって…何て説明するのさ?私のこと」「女の人だけどママの恋人だからとっちゃダメ」

ハザマ紅実「妖蘭」(美粋 1997 05)
男好きのソプラノ歌手に惚れ屋敷に男の使用人として潜入。同僚となった男性に怪しまれ迫られ……憧れの歌手は実はレズビアンで言い寄る男を避けるためにゲイ男性ばかりを使用人にしていた(迫った使用人はてっきり主人公が男性だと思ってた)。主人公は歌手の恋人になりハッピーエンド

英みちこ「同級生」(スクレ 1995 05)
読者の体験手記を元に構成とのこと。高校時代からの同級生、大学になり部屋にお泊りしたとき互いの思いを告白し愛し合う。恋人として付き合うも短大の彼女が先に就職しさびしさを紛らわすためサークル仲間の子と浮気。半年付き合ううちに恋人にバレる。が、なんとか関係修復。しかし大学卒業就職後、恋人は会社で好きな男性できたといって別れることになる。友達にも戻れず7年たっても彼女を恋しく思っている

近藤厚子「マイ・ライバル」(スクレ 1995 09)
実業団バレーボール選手の主人公。同じ年で高校時代から強豪エースだったチームのエースによくつっかかっていたが、一緒に特訓するはめに。特訓は主人公をよく鍛え……実はエースは靭帯切ってて引退を考えていて後釜として主人公を鍛えていた。わかりあい愛し合い相棒になるハッピーエンド

井出知香恵「優しい夜と茜色の朝」(美粋 1997 02)
美根子先輩に振られた主人公。見返しを決意。自分を磨くため亡き兄の義姉をダシにするため会いに行く。義姉はさびしげな絵を描いて過ごしていて……姉から実は自分を好きだったといってもらえ愛し合うがあくまで騙してるつもり。が再会した先輩を前に義姉が好きだと認識し先輩を振って義姉の元に戻りハッピーエンド

天野しずる「月のくちづけ」(美粋 1997 07)
12歳の時に仲良くなった少女二人。離れてもずっと文通を続けていた。二十歳になったとき、主人公の住むアパートの隣部屋に彼女が越してきた。実は彼女の両親は彼女が二十歳になるのをまって離婚、自由になった彼女はすぐさま主人公の元に。互いの気持ちを確認して愛し合うハッピーエンド

高見沢ゆに「かわいいペット」(スクレ 1995 09)
ノンケ女子が好きなコンパニオンの経営者の主人公がナンパしてノンケ女の子とSEXしてくどく……が一回こっきりで次につながらない最初に戻るループもの

小田芽衣「空へ」(美粋 1997 11)
デザイン会社の社長。営業の女性と前の会社を一緒にやめ独立、生活を切り詰めるためシェア生活をしていたが、相手のプライベートには立ち入らず。会社は順調だが彼女との距離に悩み……互いに好き同士とわかりハッピーエンド

広末サリナ「聖服のイブたち」(美粋 1997 09)
主人公は女学院の保険の先生。フランス語の先生と恋仲だが、SEXはまだ。欲求不満でSMしたいと妄想するも危ないと抑制。学校で二人でキスしたところ、生徒に見られる。生徒はいいよってきて主人公は据え膳食うが余計に欲求不満が貯まる。そして生徒と仲良くしているところをみられた恋人に別れを切り出されてしまう……仲直りして晴れて愛し合うハッピーエンド

川月るい「ピュア・アンドロジナス」(スクレ 1995 10)
主人公は高校時代女性と付き合っていたが世間体を気にし振って卒業。幾年たち酔って二丁目をふらついているところイケメンになった彼女と再会。彼女は主人公が男としか付き合わないから男になろうとしていた……主人公は今の彼を拒んで彼女とよりを戻すハッピーエンド

麻生なつ子「Mother」(美粋 1997 11)
不妊治療中の主人公。病院で出会った認知されない妊娠してしまった娘に肩入れ。悲惨な彼女の生い立ちを聞き愛おしく思い離婚を勧める。娘は離婚したが彼女の元彼がより戻そうとして暴力を古い流産、娘は別れ告げて地元に戻っていく。主人公も離婚し娘をおっかけハッピーエンド

東克実「女子大生恐喝事件 個人授業」(スクレ 1995 04)
大学生の主人公は元彼の思いの残るなか家庭教師をしている娘と愛し合うようになる。彼女はたまに高価なプレゼントをくれるがそれは万引きした代物だった。主人公はやめさせたい思いから彼女の両親に万引き代の60万円を恐喝、がすぐに警察に捕まる


その他、レズビアン誌『フリーネ』や『ANISE』でも描かれている甘栗太郎「話をしようよ」(美粋 1998 02)も出来よく面白かったように思う(のだけど、メモしてなかったので面白かったいうことしか覚えてない)

※2018-08-26
あらすじに号数併記。kindle 単話作についての記述のあたり変更。その他微調整。