『女たちが語る阪神大震災』

女たちが語る阪神大震災

前回のを書いてしまって気になったので、ウィメンズネットこうべ編『女たちが語る阪神大震災(1995.12) を一応みてみました。と言っても図書館でざっくりみただけですが…買ってもよかったかもです(追記:後日購入)。多数の女性の方の2,3頁のいろいろな震災体験談集といった感じで、自身のエピソードを書かれている話が多いようで概ねよかったです。


この本自体は1995年末、つまり『流言兵庫』『物語の海、揺れる島 「作られた伝説」』が書かれるより前に出ています。(少なくとも与那原恵氏がボランティアで神戸入りしたのが震災1年後とあるのでいろいろ発覚する前でしょう)

レイプ関係は、噂話ベースと思われる話2つ、微妙な伝聞1つ、相談を受けた方の話2つ、ありました。
噂話ベースと思われる話は、この団体代表者の方のものと、リュックネタを題材にした詩のようなものです。代表者の方のは、他のところでも書かれている話とそうかわらない感じだったと思います。正直いうとHさんがネタ元の別の事例が書かれていないかと期待してたところもあったのですが、そういうことはなく既知の例でした。詩ぽいものは怒りを滲ませていて義憤にかられた方の作なのでしょうか(もし近しい人の作だったならば書き方違いそうですし、きっと元ネタが見つかったとされてると思いますし)。

微妙?な伝聞モノは、他の本から転載されたもので、ちょっと興味深かったです。3月中旬のある会合での保健婦の方の話を聞いた方が書いていて、避難所でレイプ事件があり、止めに入った教師が暴力を振るわれ怪我をしたり、ボランティアの女子学生が半壊の建物に引きずり込まれレイプされたりといった話を紹介されています。他に、避難所は夜も電気がつけっぱなしだがトイレへ立った男性が通りすがりに女の子の胸を触っていくという話。体育館の裏や倉庫の片隅・救援物資が積まれた陰での性交(レイプ含む)を幼児たちがみてる。小さな子どもに対するイタズラ(パンツ脱がされたり触られたり)。いろいろな場所からの報告で、比較的小さな避難所でリーダーシップを取る人やボランティアがあまりいないような場所でおきてる。 これらの事例のいくつかは代表者の方等が書かれてる(講演されてる)ネタとかぶってるようですのでネタ元なんでしょうかね。

保健婦の方がどう話を収集されたかが(自身の経験か聞いた話か)不明でソースとして?な面もあり、レイプ関係は「流言兵庫」で実話扱いでレイプ話が扱われる様と実際のレイプ事件が見当たらない様がありますし、この本のレベルの伝聞情報は噂レベルに留めるのが無難でしょう。

相談を受けた方の話は、どちらも実名入りでした。
一つは保健婦の方の話で、地震があったから生じたわけではない、と断りながらも、避難所生活をされている大学生からレイプのあった次の日に公衆電話から相談を受けたこと(公衆電話越しゆえ十分にケアできない歯がゆさ)を書かれていました。
もう一つは神戸市でクリニックを持っている(たぶん)医者の方へのインタビューで、夏はレイプがらみの相談が増えるが、今年(95)は特に多かったようだとのこと。避難所で人気のないところに引きこまれたりレイプまではいかないまでもいたずらされかけたり嫌な思いをしたという話をわりと聞いたとのこと。みんなが精神的に荒んでいるヤケになっている時はどうしても酒に走って破廉恥な言葉をかけたりする人もいる、と。(流れ的には患者から聞いた本人自身の話と思いますが、非常にひどい疑い方をすれば叙述トリック的に患者自身以外の聞いた話の類が混ざってるの可能性もなくもなく) (「作られた伝説」で紹介される神戸市内の産婦人科医と違う人なのか同じ人なのかはわからないけれど)

だいぶ「流言兵庫」「作られた伝説」に影響されているので偏ったメモですが、個人的には、Hさん以外のネタ元があったり、被害者の相談を受けた方の談があったりでよかったです。(あと小説以外で叙述トリックかもなんて思いたくないなあ、と)。


ついでに。
猪熊弘子編『女たちの阪神大震災。実はうろ覚えで本を探したため間違って図書館員さんに出してもらった本だったのですが、題材的に近いものなのでざっとみてみました。65人ほどの女性の方の話で、著者自身震災に合われた方で、あとがきの日付が1995/2/17、震災1ヶ月以内に聞いた話が語られていました。このタイミングで語れるとなると幸い家族の不幸のなかった方々のようですが(強引に聞き出した類等なく)。(内容自体はDV関係ですがウィメンズネットこうべの代表者の頁もありました)