小野塚カホリ『愛い奴(aido)』

愛い奴(aido) (IKKI COMICS) 愛い奴 (ダイトコミックス)

全8話。主要登場人物は、主人公のうれ葉、うれ葉と恋仲になるレズビアンのさをり、うれ葉の元カレ海老原、海老原の教え子でレズビアンの毬谷。毬谷は自身の話もサイドストーリー的にありますが、本編的には狂言回し役といったところでしょうか。

各話ごとに注目すれば、その中ではそれなりにまとまっているのですが、通して読むと、多少ちぐはぐ感があるかもしれません(読み返していると薄れますが)

絵は結構スキなほうです。はっとさせられる場面もあって、たとえば、point 7 の、さをりと毬谷のキスで始まる4ページ、二人に向けるうれ葉の何とも言えない笑顔が素晴らしいかったです。

ラストに海老原が呟く「……愛がほしい。いつかは愛が」はテーマなんでしょうか。
四人は、最終的に伴侶的なパートナーを選べてない・得ていないのですね。うれ葉は状況に流され続け結局伴侶不要とし愛する対象として子供を作り、さをりは恋人がいても自分の自由を大事に生き(うれ葉との再会や子供を思うと最後は多少変化がありそうにも)、海老原はうれ葉に振られ結婚相手とも離婚になり(レイプ相手のさをりを含め伴侶を必要としない女性ばかり...。愛がほしいというわりには相手を上手く愛していなさそう)、毬谷は特定のだれかに執着している様子なく。


女性同士(の恋愛)、より、女性(うれ葉、さをり)の生き方、のほうにウェイトがある感じでした。
※(うれ葉・さをりがどぎついだけで、大人のレズビアン達を眺める立場の毬谷は少女故に百合的かもですが)


あと、これは誤読大ですが、冒頭の高校時代のうれ葉の相手は横田先生なのかと思ってしまいました。横田先生の登場シーンはうれ葉のHシーンの直後くらいのことが多いので(特に高校時代を思い出したP26付近とか)。ただ結局特に接点はなかったようなのでどちらでもいい話ですが(横田先生の最後の登場がP178でうれ葉・毬谷がいるページなのでちょと気になるも うまく意味を見いだせず...この女性が横田先生でない可能性もありますし)


ロングロングあ・ごう
ついでに短編「清ら影」。百合姉妹Vol.1(2003)掲載、『ロングロングあ・ごう』に収録。
初出順では『愛い奴』の連載終了の直後ぐらい発表されている短編で、毬谷という名で同じ絵のキャラが主人公です。内容的には単独のもので、同じ舞台とみなすなら横田先生に出会う前の話、といったところでしょうが、単に流用しただけかも、という気がします。