大野安之 作品での百合関係

百合で名前のあがるのは『ゆめのかよいじ』でしょうが(追記:『超電寺学園キラキラ』もそうかも)、代表作である『That's イズミコ』にも若干エピソードが入っています。

『That's イズミコ』

Thats!イズミコ 1巻

超テクノロジーを持つ極楽院一族のマッドな天才イズミコと、その親友の普通の女子大生ユーコを中心としたドタバタ&シリアスのSF作品です。全6巻。(連載時期は 1983 - 1987)

百合作品というわけではなく なんでもありの作風の中で百合要素もままある程度ですが、ラストは余韻ある百合系エンドといえるのではと思います(百合的非ハッピー系なので好みのわかれる類ですが…… 百合に限らず漫画でこのように魅せてくれるエンディングはそうそうないので)

2巻の「Daydream」は(モノの精の類ですが)百合系エピソードでわりと独立した短編になっていると思います。

イズミコを試しに読むならば(絵やシリアスパートの有無を思えば)1巻より2巻のほうがよいかもしれません(気に入れば1から読む、で)


なお、『Scene』収録の「BISSEXTILE」はイズミコ4巻「としのくれのぷれぜんとつ」あたりのスピンアウト作品のようになっています。

また「ゆめのかよいじ」とは直接の絆がりはありませんが、5巻「CONFUSION」が土地の変遷記憶を扱っていて(そのときのユーコの親友の顔は「ゆめのかよいじ」の真理の親友の顔と同じだったりで)、「ゆめのかよいじ」は土地テーマ&百合テーマを深化させたものという趣もあります。

※読み返していて、4巻の見開き1コマでイズミコが叫ぶ場面をみて、二宮ひかるシュガーはお年頃1』の見開き1コマでハタナカが叫ぶシーンを思い出し吹いてしまいました。妙なところで似ているものです。


追記2013: 絶版で古本はものがあっても高めになっていますが、ありがたいことに今は jコミで読める状態 になっています。
また 2013 には 『That's イズミコ ベスト』という選集が出ています。ギャグ/シリアス/実験ごちゃまぜのいかにもイズミコらしい作品が選ばれていてなかなかよい1冊です。ただ百合的には残念ながら百合要素の濃い話(Daydreamやシリアス長編/ラストの類)は省かれているので百合目的のみなら避けたほうがよいでしょう。


ゆめのかよいじ

ゆめのかよいじ (ニュータイプ100%コミックス)

真里が転校した学校には古い旧校舎があり、そこで出会った幽霊の梨絵に惹かれる...

連載は1987年(単行本1988年)。2001年に修正版が出ました。
2001年版は 1988年版に対し以下のような修正がなされています。

  • 絵柄の変更や背景等の手直し
  • 性表現をなくし、代わりに百合表現やエピソード増量
  • エピローグのSFエピソードの削除.

大筋や雰囲気がそう違うわけではないのですが、それでも結構な変更で、人によって評価がわかれていると思います。(私自身はSFファンだし1988年版を先に読んでいるので、どうしてもそちらを好んでしまいますが)


 SF好きにとっては、SFエピソード削除は根本的問題ですが(1987,8年というサイバーパンク上陸直後の時期にこの出来のモノが描かれてるのは惜しく)、しかし興味が薄い人には蛇足的なものかもしれず、無い方が落ち着いて見えるかもしれません。(削除されたエピソードで気になる本編的情報としては真理が一生独身だったことがわかる点かも)


 絵柄については作者の絵が変わっている以上仕方ないでしょうが... 1988年版(やイズミコ)時分の絵柄は、当時としても癖のあるほうで好き嫌いがわかれていたように思いますが、その絵柄を好んでいた人にとっては 2001年版は魅力が減ったように思うかもしれません。

また2001年版は画風の違いもあって表情の変化が減ってしまっているようです。1988年版は目ン玉がサイズも変えよく動いてとぼけた感じや喜怒哀楽が大きくでていたのが2001年版ではおとなしくなってしまっています。(少々無茶でも表情が描かれてる方が読みやすいだろう、とは思います)


 性表現については、1988年版は多少唐突かもしれません。エロ作品を読んでる気分でないところで出現すると、アレっという感じです。二人のセックスシーンは、能の舞台で「羽衣」(?)のようなイメージを使っていて雰囲気のあるものですがテーマである土地にそのイメージが合うのかといえば微妙な気もします。2001年版はそのへんうまく描き直されていて、徐々に親密になっていく感じです。ただ1988年版は、初見こそひっかかるかもしれませんが、直接的表現ゆえ真理と梨絵の親密さ深さがわかりやすく、それと比べると2001年版は物足りなく感じるのでは、と思いました。(比べなければ気にならない類だと思いますが)

追記:百合目的なら法外なプレミア価格の1988年版なんぞ気にすることなく2001年版がよいでしょう。

追記(2013):ありがたいことに今は jコミで1988年版が読める ようになっています。(映画公開のタイミングでjコミ入。映画のほうは視聴機会がなく未見ですが検索してると百合的には凹む類らしい?…)
なお 2001 年版については有料のですが通常の電子書籍(レンタル)版があるようです。

『scene』

エロ系の短編集です(1988年)。百合系は11作中 5作。

「プールの日」「SCENE4.0」「SCENE6.0」「Aphonia」「BISSEXTILE」
(他も姉弟とか小学生同士とかわりとインモラル系)。


「BISSEXTILE」はイズミコでの設定が使われていて、それを知っていないと、なんのことやら、だと思います(が、どっちみち変な設定なので対した差でないかも)


『超電寺学園きらきら』

超電寺学園きらきら

"あくのていおー"を目指す超電寺学園の生徒会長 一大寺緋色を阻止する為、"せいぎのせんし"をする副会長で親友の比呂院真奈美は、戦いの日々を送る……

"レズ"あり"ショタ"ありエロあり理屈抜きのドタバタなSF(イズミコ系)。
この作品はもともと同人誌発表だったものをまとめた物らしいです。(単行本は2002年)
百合的にはショタの比率が高めで何ですが、一応(過去暴露以外の)じゅうにさいのしょうねんは期間(一定条件)限定で女の子が変身したものなので、全員女の子ではあります(いちおう)。