あねらら

AneLaLa Vol.1

本屋の雑誌棚をふらっと眺めて"新増刊" とかかれた AneLala が目についた。意味が頭に届くとなにげにひどい変な書名のような……と近くをみたら姉系プチコミなるものもあったので時流なんでしょうか(今検索したらアネで始まるファッション誌が2誌ほどひっかかる)。表紙の作家名をみると一人を除いてみな読んだことあるけど今全部買してるのは一人だけなので微妙なラインに思いつつ作家歴的に美味しい時期の人も多そうで――裏表紙の掲載作紹介で、葉鳥ビスコ「プティトゥ・ペッシュ!」“深夜のカフェ。依子が出会った店主は魔女!!?”と女の子二人の絵で煽られているのがすごく気になったというのも大きく(一瞬間のロマンスを百合認識する奴としては)、とりあえず購入。

雑誌自体は“オトナガールに贈る”とあってそういう年代の女性がメインターゲットなんだろうけど、Ane という文字通りのコンセプトもあるのか掲載作9作中4作がアネ絡みでうち2作は姉弟モノ、で、そういうのも読みたいモノにとっては、これはこれで嬉しい誤算。全体的に達者な描き手さん達でした。


AneLaLa プティトゥ・ペッシュ!  story01
で「プティトゥ・ペッシュ!」。若手編集者の依子は心読まれたかのように食べたいメニューが出てくる深夜の穴場カフェ「Pêche」に連日仕事帰りに通い詰め。癒し系美人でハイスペックな店主を女神を通り越して魔女と思いながらもとうとう休日にまで店に寄ってみるが…… 上質の、“恋愛でない”百合短編でした。うめぇ。ごちそうさまです。「1度は描いてみたかった女子まんがです」とあるし作者の他作や掲載誌からすれば特に百合どうこうじゃない(まして恋愛系百合はまずありえず)けれど、今作が、このまま、「百合姫」や「ひらり、」に載っていたとしても百合作品として全く違和感は無いでしょうね。(連作1話のようにみえそうだけど)

[ネタバレ有]
専門誌だと 「なんで彼氏いないの」「……なんでだろうね…」というモデルの子との何気ない会話は違う伏線に化けそう。依子とたつ子(店主)以外の登場人物もほとんど女性(上司、仕事仲間、モデルの少女達) というのに加えブラフ的に出てくる男性二人が実は弟とゲイバー店主というのも百合作らしさに貢献してそうで……ほんと(味付けとして)意識的に百合フォーマット使ってんじゃね?と思えてくる。
漫画としては対照的な二人の描き方がよい感じ。依子の毎日の服装・アクセサリ具合に対したつ子の普段着の無頓着ぶり、ドジもあり徐々に上司に認められていく働きぶりもありの普通に勤め人の依子と職業に関しては天才的なたつ子。正体がバレたあとのたつ子とのやり取りは7歳下のモデルの子の会話と同様な面をみせてるし。そういうのもあってシーン的には“なんという傲慢 なんという図々しさ”と思う依子の紅潮した熱い眼差しの表情がすごくよく、映えていてよかったです。しかも続けてたつ子が「わたし達って実はすごく気が合うんじゃない? なんちゃってエヘヘ」とのたまうので悶えてしまいます。対照的だけどこんな出会いして同い歳同士となれば以後よい友だちになるだろうなあ、で、ほんと続編を読んでみたいと思ってしまったのでした(実際に描かれると百合方面は薄くなるだろうとしても)。
[追記] 実際連作になり、単行本1冊にまとまってる。男性へ恋する回もあるけれど概ね友情百合として堪能できて満足でした。

プティトゥ・ペッシュ! (花とゆめCOMICS)