"百合"普及についてのメモ

追記: まず1976年に男性同性愛誌『薔薇族』に女性読者のコーナーとして「百合族の部屋」が誕生、1977年に編集長的には百合族=レズビアンの意があることが表明される、が、雑誌的には女性読者の意味での使用も長く続く。1983年のポルノ映画『セーラ服百合族』で言葉が一般へ普及したと言われる。耽美雑誌「allan」には3号(1981)にて伝播)


「allan」では 1981年後半くらいから1982年にかけて百合という言葉が普及した感じだけれど、「allan」 から 「OUT」 や 「ファンロード」に'百合'が伝播したのか、気になったので 年数ばらけて80年代のそれらを古本購入。OUT 7冊、ロード十数冊。(少々痛い出費だったけれど国会図書館か米沢図書館を目当てで東京行くよりかは安いのでよしとしとく)

ざらっと紙面眺めた感じ、やっぱりそんなルートは無さそうだ、というのが結論。
雑誌の性質的に、百合という言葉はおろか百合系のネタもほぼ無いし。(気がついたのはOUT1986.2のダーティペア特集で'ユリ'のダブルミーニングネタくらい。 OUTからすれば増刊に隔離してるんだから本誌で扱う必要もないものな)


追記:実は「Loveゆり組」が1991年12月にエロ漫画雑誌として創刊されていた。こちらによると3号まで出たらしい。また2002年に単発アンソロジーとしても出ている。ただし'レズ'の別名としての'ゆり'のようで百合ジャンル的なニュアンスはなさそう。


1993年に描かれた「花井ちゃんのレッスン」からすれば当時から"百合"創作という言葉はあっただろうで、百合同人活動していた人たちはいただろう、思うのだけど。

1992年から始まったセラムンブームで百合需要は拡大してたはずで(公式カップル はるか&みちる が出てくる第三部は1994年だけど)百合二次創作作品は増えてたのだと思う。ただ'百合'という言葉が普及してたのかはわからない。女性には普及したけど男性には普及しなかった、とかありそうな気もしてくるし。このへん当時を知る人が語ってくれるとありがたいのだけど居られないものですかね。

追記1998年の小説アンソロジーカサブランカ革命 ― 百合小説の誘惑」は副題のように“百合”表記ありだった。“百合”のルビは“カサブランカ”だけど。続編は「カサブランカ帝国 ― 百合小説の魅惑」(2000年)

“ソフトだけど完全に百合”という言葉が肯定的に引用されてるマリみて2巻1999年2月の発売。web で1巻(1998年4月)をこう評したサイトがあったから載っているわけで、この頃には百合愛好家がネットで活動していた、と。ただ、今ググると、簡単には古くからやってるサイトはみつからないよう。(ザルな調べだけど1999年に百合に言及している頁はあるにはあった。丹念に古いリンクさがして internet archive 使えばもっと見つかると思うけれど不精)

ちなみに1993-1999の間で"百合"という言葉が出てくる本は手持ちではなさそうだった(追記:カサブランカ2冊あった)。レズビアン誌の『フリーネ』とか『ANISE』とかでも使用しない言葉だったよう。ウテナもこの時期だけど手元のムック1冊のスタッフインタビューとかをみても百合という言葉は使われてなさそう。他のムックやアニメ誌を調べたわけじゃないので違う可能性はあるけれど、普及してなさそうな印象。(※ジャンル的な使い方ではないけれど、一応、"新・百合族"シリーズはこの時期の作品)


マリみて2巻の次に "百合|ゆり" という言葉が出てくる(手持ちの)本は、2002年11月の成人向漫画アンソロジー『Loveゆり組』追記修正:1991年に一度雑誌として創刊されていたモノだった。どちらにしても百合ジャンル的な意味での'ゆり'ではなさそう。(が、この時期に復活したというのは百合ブームを認識していたのかも?)


その次が2003年6月の『百合姉妹vol.1』。途中で百合姫に変わるとはいえコンスタントに刊行されていて、ネットでの百合サイトは2004年以降多くなってるように思われるので、百合ブームの軸(の一つ)として、言葉を普及させたモノとして、百合姉妹/百合姫の影響は大きそうだな、と思う。

追記2003年11月発行のアンソロジー『百合天国』の編集後記には「後年“百合元年”と呼ばれるのではないかと思えるくらいに、今年は“百合”がブームとなり、」とあり、ブームを実感されていた模様。


ところで海外の Yuricon がこの名になったのは 2002年。つまり『百合姉妹』の影響は無し。それでも"Yuri"を採用してるのだから、2002年時点でもそれなりに興味ある人には無視できない程度には"百合"は流行ってたってことなのだろう。

1999〜2002年で百合ジャンルが広がる一番の理由はマリみてブームだろうけど...やっぱり“ソフトだけど完全に百合”の記述が "百合"という言葉が広がるのに効いていそうだよなあ。
他にも要因もありそうに思うのだけど、当時の事情あまりわからないし...大事なもの見逃してるのかな。


(2016-10-15 「百合天国」追記 2016-10-17 「Loveゆり組」関係の記述を修正.『薔薇族追記)