矢野礼子作品メモ

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矢野礼子 著

  • 「オータムラブ」「へ長のメロディ」
    (『花のあるくらし』(1993)に収録. 他BL4作。百合2作はそれぞれアップル花組No.1(1992?)、No.4(1993)掲載)

        

  • 『花井ちゃんのレッスン』
    (1996. アップル花組No.8,10-13,15-17 連載 1993-95)(携帯の まんが王国 で読めるらしい)

        

というのがある。


百合ジャンル的に言及がほぼなさそうだけれど昔たまに見かけたサイトで紹介されてた百合作で、1990年代前半に描かれたにしては00年代以降の百合作に近い後読感があったり、「花井ちゃんのレッスン」では、描かれた1993年の段階で今日の百合ジャンル(GL)に近い意味で"百合"という言葉が作中で使われていたり、1995年に描かれた回では "ユリ度は低くても" なんて表現もあったりして、ジャンル的に(生き証人として)ちと大事なんじゃね?と思える。


『アップル花組』という隔月刊の少女漫画雑誌に掲載。古本数冊みた感じ、全部ではないけれどBL作の割合の高い雑誌だった模様。BL寄の雑誌での百合系だから雑誌外に知られにくそうで、たぶん当時の百合ファンへの影響というものはほとんど無さそう。


「オータムラブ」は女子高生の主人公と年上のモデル女性と主人公を慕う後輩の女の子が出てくる恋愛モノ (ネタバレ:年上側が同性同士を気にし恋人になりたくなる気持ちを殺して主人公から離れるのだけど、別れた後の主人公は最終的には慕ってくれる後輩を大事に思うようになる)


「へ長のメロディ」は赴任先の女子高生たちの仲の良さをみてホッこりしている奥田先生と、その先生を気に入った令嬢の白鳥さんの話(コメディ)で、白鳥さんには先生のことを相談できる親友ユカがいる。で、白鳥さんとユカの相談シーンは下着姿で並んでベットの中だったりする。会話的に二人の間に恋愛的なモノはなさそうだけれど、どういう具合の仲かはみていて悩やましい...


「花井ちゃんのレッスン」は、ピアノの先生と先生に恋する花井ちゃんの話で、他の女の子たちのいろいろな関係も楽しい。特筆は、百合小説書いて同人誌作ってる水谷ちゃんの存在で、花井ちゃんを後押ししたりネタ帳にメモったり。『百合男子』を経験した後に読み返すと、ああ…百合女子、だよなあ。


個人的には、絵柄や流れがわりと好みなこともあり、おそらく百合オタになる前に出会っていても少女マンガとして十分気に入っただろうと思うけれど、絵柄やノリに時代を感じる部分はやっぱりある。

掲載誌的に同性同士を悲劇にする必要なさそうだし大半コメディ調なこともあって後読感はいいけれど、描かれた年代の常識の影響はあり女性同士への禁忌感をキャラ達は一応持っているし、(25歳には結婚していて当然のような)当時の結婚年齢の縛りの強さも表立ってある。大人側の女性は意識的にか無意識にか同性恋愛は諦めたり考えなかったりで何かしら男性も絡むけれど、高校生側はわりと無邪気に恋したりするので、"その年頃での感情"的な扱いをしている面はあるかもしれない。


著者の矢野礼子先生は女性で、ググってみると2009年にお亡くなりになられている模様。
投稿時代のペンネームは矢野イサクというらしく、こちらをみると 1980年のなかよしで努力賞とか佳作とか研究生とかで何度か名前が載っていて"矢野礼子(矢野イサク)"と併記されてる場合もあった。16歳とも。ということで上記2冊の掲載の頃(1992-95)だと28-31付近で働き盛りの頃の作品かな?と。
あとググってみると旦那様は竹本泉先生らしい。Wikipediaで記されてないところをみると明言された資料はないのかもしれないけれど。ただ画集『竹本泉★WORLD』(1994)での矢野礼子先生の扱いやメッセージ内容からするとそうなんだろうなと納得。(竹本泉さくらの境 1」(2005)の なかがき での "なんか最近百合まんがとか流行ってるしー" は結構実感こもってそうに思えてくる)