さくら並木

完全復刻版 パリ‐東京・さくら並木

高橋真琴『パリ〜東京/さくら並木』。2006に復刻された貸本作品2冊セットです。(松本零士氏の蔵書を元に復刻されたらしい)

『さくら並木』(1957)が百合(エス)作品。


卓球の試合において由紀子は愛する千影お姉さまと戦うことになり精一杯やって負けたものの、クラスのみんなに由紀子がわざと手を抜いたのではと疑われ、それがこうじてお姉さまともギクシャクしてしまい…


こちらの紹介をみて読んでみたもので、詳しい解説があるので、そちらを見ていただくほうが。

冒頭12ページほどは本編とは直接関係のないプロローグで、絵柄が細い線でイラスト的(というか絵本的)で雰囲気があり、ここだけで一つの短編といった趣があります。
本編はストレートなエス話、というったモノでしょうか。試合半分、お姉さまとのラブっぷり半分、っといったところで、読む前に想像していた以上に濃い展開にニヤついてしまいます。最初に1年生の主人公と2年生の子と戦うわけですが、二人共3年生のお姉さまを慕っていて“槇千影の愛を争っている二人”と表現され出だしからテンション高いです。ただ、そのあとの由紀子と千影のラブっぷりの描き具合を見るにつけ、読み返すと2年生の子がちょっとかわいそうに感じたりもします。(あと、背景の人たちが結構動いて(いるポーズをして)いるのが目につきます。何でもかんでも動かしてしまっているゲームの背景オブジェ・アニメーションと同種のしんどさがあるような気も)


『パリ〜東京』は付録冊子の著者インタビューからすると雑誌『少女』に連載したもので、途中から(絵を描くので手いっぱいで)原作者と付けてもらったもののようです。百合というわけではないですが、メインの筋(母娘-家族モノ)以外の部分で少女たちの仲の良い様が結構描かれていて、雰囲気はあります。


これらは少女マンガですが、今の少女マンガの感覚からすると、やっぱりちょっと違った感じもします。1970年の別マを読んだ時と近い感じもありますが。絵柄や時代の風俗の違いは当然あるのですが、(ゆったりしているけれど)コマ割りの違いや、文章作法やリズムの違いが大きそうな気もします。ただ付録冊子のインタビューからすると、漫画家からはこんなものは漫画じゃないと言われ挿絵師からはこんなものは漫画だと言われてたそうで(それゆえに今に近い面もありそうですが)、当時のまんがを高橋真琴作品で推し量るのはマズいのかも。


あと(これはちょっと失礼かもですが)著者が男性という情報の影響のせいかもしれませんが、少女の描き方(視線)に男の子向け百合作品や美少女マンガに近いものがあるようにも思います。いやらしいとかじゃなくて'萌え'の部類として。サクラ並木冒頭付近の見開きのテニスコートの女の子の描き込みぷりや、着替/シャワー/お風呂シーンなど、女の子を描くのが好き(そう)な少年誌美少女誌の作家と同傾向のように思えたりします(パリ〜東京のお風呂シーンで、体の輪郭だけで乳首を描かないとはいえ、他の子では泡で胸を隠しているのに二人ほど泡を描かいてなかったりするのは確信犯的な茶目っ気なようにも思え)。