1980年代前半の…

わたなべまさこ『悪女シリーズ3 蜜の味』(連載1981,1982付近)はレズビアンものの中編ですが、その作中、主人公のモノローグで、

 “男役がタチで女役がネコというくらいは週刊誌でみたことがある”

なんて記述が出てきます。
この当時からある言葉なのか、とちょっと驚きました。(単に自分が知ったのがここ10年ってだけなんですが)

そして“週刊誌で見た”というのが気になるポイントなのですね。

物語中の台詞なので実際に記事がなくても当然なのですが、作風や時期からすれば全くの創作でなく作者側が週刊誌でみた可能性が――掲載誌が「週刊明星」ということもあり――高そうな気もするのです。

当時の週刊誌でそういう話題なんてありえないのか、たまたまならあり得るのか、なにかブームがあったのか、等当時の状況をわかっていないので想像するだけですが……ただ、関係ありそうに思えるのが1980年の佐良直美事件(スキャンダル)。ググってると当時大きく扱われていたようなので、これ関係でレズビアン解説ネタが週刊誌にあってもおかしくないかも、と思えるのでした。

80年代前半には『蜜の味』以外にも、樹村みのり『海辺のカイン』(連載1980〜1981)、有吉京子『アプローズ−喝采』(連載1981〜)、樫みちよ『彼女たち』(連載1981付近)、長浜幸子『イブたちの部屋』(連載1983-84)、福原ヒロ子『真紅に燃ゆ』(連載1979付近ですが本になったのは1982) 等、女性同姓愛をメインに扱った作品がありますが、80年代後半以降百合の流行る2000年代に入るまで女性同性愛を扱った(少女・女性)漫画の長編作の少なさと比べると、割とまとまって発表されているように思えます。

なので、この時期は微妙にレズビアンネタが流行ってたのかなあ、という気もしてくるのでした。
サンプル数が少ないので単に作家の転換期や雑誌・出版の方向性の模索等のようなものかもしれませんが……


蜜の味 (わたなべまさこ名作集―悪女シリーズ)