制服の処女〈完全版〉

制服の処女 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

DVDで『制服の処女〈完全版〉』(せいふくのおとめ)を視聴。
1931年のドイツ映画。モノクロ。日本公開は1933年。


母を亡くして寄宿舎に入れられたマヌエラが、みなに好かれているベルンブルク先生に恋をする話。


まがうことなき百合映画でした。(この当時のレズビアン映画のよう)
女性しか出て来ません。てか、原作者も監督も女性。男はせいぜい写真のみ。(こちら等みてると原作者はバイセクシャル?ぽい)


ファシズム台頭への懸念みたいな面もあるようだけど、女の子たちの寄宿舎生活ぷりや仲の良さ、マヌエラの先生への片恋ぶりがたっぷり描かれてる(いやちょっとだけ片恋じゃないかも?)。

※1931年は日本じゃ満州事変真っ最中、ドイツではナチス台頭中だけど まだ政権を取る前。1929年の世界恐慌後でだんだんきな臭くなってきている時代といったところ。


時代背景的に最後はハッピーエンドではないけれど死者無し男無しで終わるので、余程のハッピーエンド主義でないかぎり百合好きなら是非みてみるのがよいかと。


以下多少ネタバレありで...
マヌエラが他の女の子たちと出会った時の会話は

エルザ「寝室はどの部屋?」
マヌエラ「ベルンブルク先生の…」
女の子たち歓喜
イルゼ「私も同じよ。"恋"に気をつけて」
マヌエラ「どうして」
イルゼ「ベルンブルク先生にみんな夢中なの。こんなやっかみの声が聞こえるわ。“イルゼ うらやましいわ先生のお部屋だなんて。ほんとうに毎日キスしてくださるの?”」
マヌエラ「年増の先生なんて興味ないわ」
イルゼ「ベルンブルク先生は別よ。普通の先生と違うの。厳しいかと思えば、ときには怖いほど優しくなる。それが“あの方”」
他の子「“あの方”だなんて」
イルゼ「“愛しの…”よりましでしょ」

このやりとり、女の子の和気あいあいぷり、先生持ち上げぷり。この会話で、ぐっと食い入ってしまいました。

マヌエラは興味ないと答えてたけれど、そのあと卒業生のお古の制服を支給してもらうと袖にハート型のボタンで"EvB"とある。ベルンブルク先生のイニシャルで卒業生も先生が好きだった模様。廊下歩いていてもボタンが気になっている。

そんなときに階段でベルンブルク先生と初対面。服装チェックと諸注意となるけれど、後ろ姿をみて「髪型はもう少しきちんとしなさい」といって髪を整えてくれる。(期待が高まってるせいか"タイが曲がっていてよ"をみてる気分に)

みなが頭や体を洗いに行っているとき部屋に残ってエーデルガルトが寂しがってるマヌエラを慰めてるシーンでは、それを見たベルンブルク先生は予定の行動していないことを咎めず、先生もマヌエラを慰めてくれたりする。


そして初日の就寝、

ベルンブルク先生は子どもたちの額にキスして寝かせて廻って、最後にマヌエラ。

マヌエラは感極まったのか先生に抱きつく。
対して先生は


唇にキス!

先生ここは注意するとこじゃないのか?!歓喜してすぐさま見返しちまったですよ。

これ?ほんと上映したの? 少なくとも 1933年の日本上映では絶対カットされてるよね?……ああ だから〈完全版〉なのか?(こちらをみるとドイツでは上映禁止、アメリカでは大幅カットされたものが上映されたらしい。タイミング的に日本公開はそのアメリカ版かも?)

部屋の他の子がみてたら騒ぎになるのではと思うけれど、みな行儀よくベットに寝に入ったのだし、マヌエラのベットは部屋の隅で最後の番でほとんどの子に背を向けてるので、唇かどうかはバレてなさそうなのかな。

と、ビジュアル的にはここが一番ユリユリしい場面だけど、他にも女の子二人で話す時の距離が結構近い感じなんでニヤけること多かったです。


他のキャラではエーデルガルトも何気に健気でよく。初日に寂しがってるマヌエラを慰めてるのはもちろんのこと、助言してたり、みなでダンスするシーンではマヌエラを引き寄せて一緒に踊ったり、マヌエラが窮地に立ったときもすぐさま味方し会いにいくし捜索の言い出しっぺになるし。(そして、それらのときの表情も)


院長先生は、腹を満たせば国が滅びます、とか、規律と空腹が祖国を強くする、とか極端な考え方をし、生徒たちが空腹でよしとする人なんで、生徒からすれば意地悪で嫌な先生で、悪役といえば悪役ですが。でも第一次大戦を生き抜き不景気な世の中に寄宿舎を運営しなければならない人物としては超権益家になってても仕方ないとも思えたり。方向性はともかく信念を持って教育にあたってる人物だろうで、だから最後の落胆もあるのだろうし。もちろん、酷くやり過ぎで駄目な経営者だけど。


と、ま、見る前は、シロクロだし時代的にたいして百合表現ないだろうと舐めてかかってたら、全然、20世紀後半の作はおろか21世紀の作でも ここまで百合なものはそう多くないのでは、と思える代物で、大満足でした。