木内千鶴子 作品

以前1970年付近の別マを百合系中心に読んだおり、メモした作品として木内千鶴子作品があるのですが、ググってみると作者様のサイト「木内千鶴子の世界」がありました。サイトには著作短編を17作(単行本2,3冊分)、また実妹の木内佳寿子(藤田かず子)作品も3作ほど公開されています。(スキャンでなく写真で見開き600x500ピクセルくらいのため、文字はぎりぎり読めたり読めなかったりでちょっとつらかったりしますが)

公開されているお二人の作品はだいたい60年代後半〜70年代前半のモノで、以前読んだ1970年の別マから思うと当時の標準的な作風(絵柄、お話運び)の少女漫画だと思います。ただし読んだ範囲では当時としても男女の恋愛モノはあまり描いてなさそうで、友情モノや家族モノが多い感じです。おかげで今の視点だと「百合テイスト」ありありな作品になってしまうモノもあり…

木内千鶴子「バラのくさり」は社長令嬢だけど貰われ子で育て親に放置されがちな主人公が、社員の娘で出来がよく人気者の同級生にやっかみあたりつつどこか惹かれてる……<バレ> 突き飛ばしそれが原因か彼女を失明させてしまいますが、見舞いに行くうちに惹かれていき、最後は田舎に越す彼女の世話をするため着いて行く…
なんてか、恋愛でなく友情(友愛)でさえあれば、どんなに濃くてもよいのか、とそのハッピーエンド(?)を喜んでしまいました。意図せずだったかもしれませんが、ラストページの《もう いい》の背景の、よくみると葉っぱだけどパッとみればハート2つのようにしかみえない、というのは結構確信犯にも思えてくるのでした。

木内千鶴子17作の半数(or大半)はテイストありで、「バラのくさり」以外にも「海がなにをしたの?」「友情の樹よ大きく」「先生!!つめたくしないで」あたりはナチュラルに百合作品でしょうか。藤田かず子3作品は3作品とも友情百合テイストこいですし。(もちろん時代による作法・作風の違いで今の需要に合うかは別なのですが)

とま、なかなか読み応えがあり楽しめたのでした。





[2013-03-03追記]
「バラのくさり」ですが、読み返しているとますます作者はエスを念頭に置いていたのでは、という思いが強まります。
主人公は恋愛的なことは何も(心のなかでも)言わないけれど、その心情や行動は愛する人のために身も心も捧げる類ですし(主人公は出来た子じゃなく利己的なところもよく現れているので健気さはあまりありませんが逆にその年代の子ぽさにも)。絵的にもふたりの背景に花をよく咲かせてますし、よくみるとラストページだけじゃなくて途中のページのふたりが仲良くおしゃべりしているところでもハート(にみえる花びら:)をとばしていたりするのですね。
また主人公が彼女のお見舞いに買っていくのがユリの花だったりします。検索してみると「薔薇族」は1971年創刊で「百合族の部屋」が開始されるのは1976年、雑誌内で言葉自体はそれ以前から使われていたそうですが言葉の初出時期はわからず。この作品は別冊マーガレット1975年5月号掲載なので作品執筆時点までに言葉が使われていたかは微妙、また言葉自体が使われていたとしても作者あるいはその周辺で読んでいた人がいたかどうか……いまのBLの延長のような感じで「薔薇族」の購買をしていた女性層もあるようなので いてもおかしくないと思いますが。ということで偶然の可能性も高そうですが意図的にユリの花を用いた可能性もあるんじゃないかと。(追記:どうも「百合族」は「百合族の部屋」が始まった1976.11が初出の可能性高そうなので さすがに1975.5では偶然とみるのがよさそう)

まあ百合の花の件を抜きにしても、今の基準で十分百合作品だと思います。
(しかもこの当時の百合作品としては結末が百合として悲劇でないというのはかなり稀有なものかも…いや恋愛作品でないし相手の子の突然の失明は悲劇と言えば悲劇ですが)


でこの作品をかなり気に入ってしまったので掲載されてる別冊マーガレット1975年5月号をなんとか購入したのですが... 最後のページの葉っぱと思ったものは、実はちゃんとハートでした。ハートの後ろの風ぽいものが、低解像度になったおり繋がって葉っぱぽく見えてしまってただけという...